昼時の風景
週に4回ほどお世話になっている事務所から歩いて10分ほどのところに馬事公苑というのがある。
「この時期からは桜が綺麗なのよ」とその会社の社長夫人が教えて下さってから3週間ほど経ち、桜も散ってだいぶ暖かくなってきたある日から、お昼時は馬事公苑へ足を運んでいる。
公苑の正門前にはなかなか立派な並木があり、その通りの淵にはベンチが並んでいる。
すぐ側にある東京農大の学生がスターバックスで買ったコーヒー片手にお喋りを楽しんでいたり、定年後の日々を穏やかに送っていると思しき年輩のご夫婦がのんびりと散歩を楽しんでいたり、若い男の子が自転車にまたがったままくるくると回ってBMXに興じていたり、小さな子どもを連れた若い主婦がベビーカーを押しながら歩いていたり、外回りの営業マンが退屈そうに煙草を吸ったあと、ベンチに腰掛けたまま瞼を閉じていたりする。
比較的しあわせであろう人たちの比較的穏やかな日常の風景。
そんな風景の端っこ、並んだベンチのひとつを陣取ってお弁当を広げ、足下に寄ってきた鳩に「パン屑はないよ」と心の中で喋ったり、つたない足取りで目の前を横切る幼児に手を振ったりする。
ヘッドホンから流れる音楽を聴きながら新緑を見上げて木漏れ日を浴びる40分間。
嫌なことなんてもうこの先何もないんじゃないか、なんて怖いくらい希望に満ちた気持ちになる、昼時の風景。
最近はこの時間が一日の中で一番すきだ。
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