遊び
出勤時に切符の券売機に並んで思い出した。 広島に帰省した際に使った広島電鉄、通称「広電」の注意書き。 広電は広島駅から市街を抜けて、宮島へとわたるフェリー乗り場をつなぐ路面電車。 両親が暮らすマンションの最寄である楽々園駅は無人駅で、 反対側のホームに渡る場合には線路を突っ切って歩いて渡る。 それぞれのホームには郵便ポストを小型化したような金属製の箱が立っている。 その箱からひょっこりと出てくる切符を取って乗車する。 清算するのは降車時で、この切符は乗車駅がわかるようにするためのもの。 役割としては、切符というよりも整理券に近いように思うのだが、 地元の人たちも広電のアナウンスもそれを「切符」と呼ぶ。 その切符が出てくる箱、一枚引っ張るとひょいと次の一枚が出てくる、金属製の箱に書かれた注意書きが、 「遊びで切符を取らないでください」 金属製のプレートに赤いペンキで、一昔前の文字組みで書かれていた。 なんと朴とつな一文。 「〜しないでください」という直球なものいいのわりに、 必要のない切符を抜き取るいたづらを指して「遊び」と表現するあたり、 妙に人間的で、懐の深さと温もりを感じる。 印象的な注意書きだった。