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西の国から

帰りにちらとのぞいたポストに茶封筒。 すっと背筋を伸ばしたように整った文字でわたしの名前が書かれていた。 封筒を片手に階段を駆け上がる。 要らないものばかりがつまったでかい鞄の底から鍵を探し当てて玄関のドアを開け、 靴を脱ぎ散らかしたまま、向かうはコンポの前。 京都で暮らしていた頃に、毎週末のように同じ空間で同じ音を聞いて過ごした、 手放しでだいすきと言える人からの贈り物。 彼女から頂いた自作MIX CDはこれで3本目。 送って下さった新しい1枚は、雨の日に似合いそうな音がたくさんつまっていた。 同封されていたお手紙を読みながら、その場にぺたんと座り込んで、聴く。 音と音の隙間に、高い、少し鼻にかかったような、特徴のある、無邪気な、 彼女の声が聞こえた気がした。 遠くの誰かがわたしのことを覚えている。 誰かの記憶の中で育つわたしを裏切らないように、と、 手紙を読みながらしゃんと背筋を伸ばした。