アップ アンド ダウン

センスが合わない人と話をするのは、
物凄く骨が折れる。
仕事においては尚更だ。

合わないそれを指摘するなりしないなり、
不利にならないように巧く判断を下しながら
話をしなくてはならないのだろうが、
文字通り、お話にならないのだから困ってしまう。
いくら慎重に言葉を選んで、繰り返し投げかけても、
立て板に水なのである。

お茶を濁し、煙に巻いて、肝心な部分はうやむやなまま。
持ちかけた話を雪崩のような凶暴さで覆い着くし、
静かな平原を描いてみたところで、
一体何になるというのだ。

ぎりぎりの殺意をこらえて
刃を鞘に収めているのだから
せめてこちらの世界に土足で踏み込もうとせず、
互いに尊重しようとするモラルくらい持ち合わせてくれていれば
非常に助かるのだが、
自分のセンスと合致しないというだけで
安易に否定して歩く人には
もう笑い出して全肯定するより他、策がない。


わたしが笑っている、という理由で、
その笑いの出所は理解しないままに、
とりあえず釣られて笑ってみせているその人を目にして、
体中の力が抜けてしまう。


「もういいです、自分でやりますから」
やけっぱちになりかけて、喉元まで出かけた一言を寸でのところで押し殺す。
その言葉が後々、自分の首を絞めるかと思うと簡単にやけっぱちにもなれず、
ただただ途方に暮れつつも歪んだ笑いが止まらなくなる。


そして、
たった一人で、
自分の手が実際に届く範囲で仕事が完結すればなぁ、
なんて、大それたことを夢みたりする。



そんなこんなで、
ここのところ三時過ぎの15分休憩は決まって一人、屋上へ行く。
お供は缶コーヒーと煙草、それにi-pod。

めったに足を踏み入れる人のいない屋上は、
今日のような晴れた日は、とても気持ちが良い。

わたしではない誰かの古い吸い殻がニ本、
コンクリートの上に落ちていて、
その人はどんな気分でここに煙草を吸いに来たのだろう、などと考える。

会社の近くには小さな飛行場があって、
小型セスナやらヘリコプターやらが
低いうなりをあげて頭上を旋回している。

綺麗に澄み渡る青を背景に上がったり下がったりする銀色の物体を眺めながら、
缶コーヒーを飲み、
煙草に火をつけ、
11分ある曲を1曲だけ、聴く。


そうすると、
がさがさとげとげしたものは全て、オブラートに包まれて、
わたしはそれを安心して、謙虚な気持ちで飲み込めるようになる。


一人では出来ないのだとすれば、
誰かを巻き込んでいかなければならないのだ。
あたたかく楽しく、渦巻いているはずの空気へ。



浮かび、沈み、また浮かび、を繰り返す、うららかな午後

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