花かんざし
ちょうど10日前、暖かく晴れた日に、
少し厚手のカーディガンだけ羽織って、買い出しのために外に出た。
背の低いマンションが並ぶ住宅街の小道、隙間から見上げた空が澄んでいる。
気分がいい。
通りかかった花屋の店先には、気の早いパンジーでもう色とりどり。
その隣ではパイナップルミントがまだ少し冷たい風に枝を震わせる。
遠いようでいて、意外と近くにいるのかもしれない春の足音を聴いた気がして、ヘリプテラムを買った。
和名、花かんざし。
帰宅後、早速、鉢に植え替える。
ベランダの風にふるふると揺れる茎、小さくて白い蕾。
満開になることの日射しを想像しながらベランダでコーヒーを飲んで、
青空を見上げることはしあわせなのに、見ているとかなしみを思うのはなんでだろう、などと思った。
今日、その花が開いた。
何もないようでも、時間は確実に流れている。
ヘリプテラムはギリシア語のhelios(太陽)とpteron(翼)に由来するらしい。
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